1 農業の衰退は阻止しなければならない
日本書紀に見える崇神天皇の詔に、「農(なりわい)は天下(あめのした)の大きなる本(もと)なり。民(おおみたから)の恃(たの)みて以て生くる所なり。」とあるがごとく、古来より日本は、豊葦原の瑞穂の国と呼ばれ、秋になれば美しい稲穂が波打つ風景がイメージをされ、皇居では天皇陛下が五穀豊穣を祈念して季節ごとに田植えや稲刈りをされるという伝統の政を最も大切に継承されてきたことに象徴されるように、農業こそは農耕民族であった日本人の文化、魂とも深くかかわる尊い存在であった。 いうまでもないが、農業は、国民の食料を安定供給する基幹産業であると同時に、農村は、国土の保全、緑と清浄な水の涵養、さらには、都会の人たちに自然の潤いといやしを提供する場でもあり、生き物を慈しむ情操教育の場としての価値など、多面的かつ重要な役割を担ってきた。 しかしながら、今日、農村地帯を歩いてみると、至るところに休耕田で雑草の生い茂った田んぼが見受けられ、また、後継者がいない嘆きも聞こえてくる。 平成22年の統計では、主業農家が全国で36万戸となっており、この集計が始まった平成2年の82万戸の半分以下になったという実態を見ても、農業の置かれている厳しい状況が明らかだが、時代の推移に任せて、このまま農村を荒廃させていってよいものだろうか。 私は、農業を衰退させながらの経済の発展には大きな不安を覚えており、まるで、国の基が朽ちつつあるように感じる。 それは、ただ農業が衰退することのみならず、日本人の生き方、精神生活も含めて、もっと深い部分で根本的な荒廃を招いており、危機感を覚えないわけにはいかない。 今こそ、農業をもう一度根本的に見直して、その発展に向けての施策を打ち出していくときである。
2 農村地域社会を存続させるには経営規模にかかわらない支援が必要
農林水産省の永遠の課題であった大規模農家の育成は、私の知る限り、自立経営農家、中核農家、主業農家、認定農業者、プロ農家と、言葉が躍るばかりで、ほとんどその目的が達成されてこなかったのではないか。つまり、担い手に的を絞った政策は、残念ながら、ことごとく失敗をしてきたといっても過言ではない。 食料自給率の低い我が国では、食料の安定供給が一部の担い手のみで達成されるものでは決してない。専業、兼業を含め大多数の販売農家の経営努力がこれまでの日本農業を支えており、今後の自給率向上にも、こうした「担い手」とは呼ばれてこなかった農家の役割も重要である。 私の地元は、日本の一番北にある「北海道12区」という一番大きな選挙区である。ここでは、厳しい気候条件のもとで、農業も面積当たりの生産力が劣るため、規模は大きくなければならない。 しかし、本州では、規模が小さくとも意欲的に農業に取り組む農家もたくさんいるのである。 農業が今後も永続的に発展していくためには、こうした規模の小さな農家も含めた全体としての地域社会の存続が何より不可欠であることはいうまでもない。 大規模農家の育成も重要なことではあるが、このことが、農村地域社会が営々とはぐくんできた互助の精神、さまざまな連帯の取り組みを崩壊させるようなことになってはならない。
3 農林漁業は一体のもの
私は、農林漁業は一体だと常々考えている。例えば、森林で醸成された栄養分に富んだ水が水田を潤して、海に流れ込んでプランクトンを発生させる。漁民が植林に参加する魚つき林がその典型例だというふうに思っている。 かつて輸出産業の一翼を担った漁業も、今や自給率が62%になってしまった。 我が国の自給率向上のためには、我が国周辺水域の資源の回復を図り、生産力を回復していくしかない。そうした観点から、適切な資源管理を行っていく漁業者に対し支援していく必要がある。 また、林業についても、計画的な森林整備がおこなわれるような持続的な森林経営を支援していく必要がある。
4 戸別所得補償の導入に踏み切る時
EUでは、1975年に条件不利地域に対する直接支払いが始まり、1985年には環境に対する直接支払い、そして1992年、ウルグアイ・ラウンドの協議の最中におけるいわゆるマクシャリー改革で、価格支持にかわる施策として大々的に導入されました。これらの支払いは、WTOでも緑ないし青の政策、削減する必要のない補助金として位置づけられてきた。 我が国でも、昨年の政権交代の結果、おくればせながらも、今年度からようやく、米について戸別所得補償のモデル事業が始まった。来年度は、畑作物も含めて農業者戸別所得補償制度の本格実施に入る。 さらに、酪農・畜産、林業、漁業についても、それぞれの特性に応じて所得補償を導入していくこととしている。
5 食料安全保障の確立を
私は、農業は防衛と同じだと思っており、国の安全保障と同様に、食料の安全保障の確立なくしては国家の永続的存立はあり得ないと思っている。 諸外国においても、不測時の食料供給、ヨーロッパ等でもさまざまな国がさまざまな形で法的整備も含めた危機管理体制を築いている。 主要輸出国や生産国における不作、輸出国の港湾ストライキなどによる輸送障害、さらには、局地的な紛争あるいは事故によって生ずる世界の農業生産や貿易の混乱などの不測の事態に対処するには、基本的な条件整備として、何よりも平時における農地、農業従事者、農業技術といった国内における食料供給力の維持確保が重要である。 また、食料の備蓄は、その適切かつ効率的な運営ということが必要である。
6 農山漁村の復権を目指したい
最近はよく、格差社会と言われる。 都市と農村を比較すれば、歴然と格差が存在することはだれもが知っており、これまでも、所得を初めさまざまな格差が取り上げられて、論議をされてきた。 議員定数はいつも人口比で決められますが、農山漁村、中山間地域の人口減はとどまることを知りません。 少子高齢社会とよく言われますが、高齢化は、農山漁村では30年も40年も前から顕在化してきたことであります。 このことについて、都市側は無視を続けていたわけではないだろうが、山村では、とっくの昔に若者は減り、子供の声が聞こえなくなった。 先進国の中で、これほど農村から人がいなくなって、遊休農地が生じている国はない。 これに対し、ヨーロッパには美しい農村が存在している。 この違い、EUが共通農業政策のもと、早くから直接支払いを導入し、都市、農村の格差が生じないように配慮してきたからにほかならない。 日本の再生は、農山漁村の美しさを取り戻し、活性化をさせる以外にない。 そのためにも、私は、日本の片隅で、大地と格闘し、海で魚をとっている、そういう同胞を助けていきたいと思っている。